私の祖父は戦前・戦後にかけて、六甲登山ロープウエイの駅長・ホテルの支配人をしていました。
祖父の遺品の中に当時の六甲山を偲ぶ資料があります。
私の母方の祖父高岡 勇は、戦前から阪急に勤め、六甲登山ロープウエイの駅長、戦後復員してからは六甲山ホテルの支配人をしていました。
六甲の「主」的存在だったようです。
もちろん住居もホテルに隣接し、祖父母と、母を筆頭に6人の兄弟が六甲の山の上で暮らしていました。
残念ながら病弱だった祖父は私が高校生のときに他界しました。
しかも、堅物だった祖父を、母などは疎んじていたこともあり、生前に話しをしたことすらほとんどなく、私は祖父の人ざまを肌で感じることができずじまいでした。
しかし、当時としては珍しく大学出であった祖父は、文章を書いたり、絵(鳥や植物の細密図)を描くのが好きで、ロープウエイ・ホテルに勤務中も六甲山の地理や自然をまめに記録しており、そんな遺してくれた物を見るにつけ、その人となりをうかがい知ることができるのです。
ここでは、孫として祖父の記録を残すべく、遺作や写真を紹介していこうと思います。
それらに当時の六甲山に関する資料的価値を見出していただけたら、私としては望外の幸せです。
ごく簡単に祖父の略歴を紹介します。
明治42年 | 愛媛県伊予郡広田村に生まれる |
(ホテル前での颯爽たる祖父)
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関西大学法学部卒 | ||
昭和8年ごろ | 運転手だった叔父の紹介で阪急に入社 | |
六甲登山ロープウエイ山上駅に勤務 | ||
昭和9年 | 祖母と結婚 | |
昭和10年 | 母誕生 | |
昭和17年 | ビルマへ従軍(六甲山ホテルが軍の委嘱で軍関係旅館を営業) | |
昭和21年 | 復員 | |
昭和26年 | 六甲山ホテル夏季のみ営業再開 | |
昭和30年 | 六甲山ホテル本格営業再開(支配人に) | |
表六甲ドライブウエイ・六甲山保健所・小学校の開設に関与 | ||
六甲山経営株式会社取締役として六甲山の開発を手がけるも | ||
病気のため何度か入院 | ||
昭和54年 | 死去(享年70才) |
表六甲にロープウエイがあったのをご存知でしょうか。
六甲登山ロープウエイは、昭和6年から不要不急の転用のため昭和19年撤去されるまで、阪急(の傍系会社)が経営していたもので、阪神と競争するかのようにケーブルに並行する位置にありました。
祖父のアルバムには当時の写真が何枚か残っていました。
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祖父は六甲登山ロープウエイの山上駅の駅長をする傍ら、六甲山頂勤務ならではの活動を行っています。 調査の結果2つのことが明らかになりました。 |
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1つ目は、後の六甲山頂明細図制作の布石というべき、六甲山の地理に関する実地踏査です。 要するに閑にまかせて、山上のあちらこちらを歩き回っていたのですね。 しかしハンパではありません。 山のガイドができるほど、山道に精通していたようです。 これの成果として、祖父は関西山小屋という雑誌に記事を書いています(1)。 |
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2つ目は、気象観測です。 神戸測候所が山上駅のすぐ近くにある阪急食堂に百葉箱を設置して気象観測をしていたのを受けて、その仕事の一部を手伝っていたようです(2)。 |
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この時代の祖父には単に山上駅に勤務するだけではなく、職場である六甲山を極めようという意志が感じられます。 |
それが、戦後、ホテルの支配人をしつつ、六甲山そのものの開発を取り仕切ることになったことへつながっていったように思われます。
戦後の六甲山と祖父の関係について述べるに避けて通れないのが、阪急・東宝グループの創業者である 逸 翁 - 小林 一三 氏 のことです。
小林一三氏は戦前・戦後にかけて毎年、六甲山ホテルに40~50日にわたって避暑のため逗留されました。
実は、私自身は恥ずかしながら、小林一三という人物については名前だけは知っていましたが、具体的にどの程度偉大な人物であったか知りませんでした。
復興の具体的な形として六甲山経営株式会社の設立があります。
戦後の祖父は、六甲山経営株式会社の事業のひとつである六甲山ホテルの支配人をしながら、各種の事業 (表六甲ドライブウェー・診療所の開設・六甲山小学校の開校など)に深く関与したようです。
ここでは、祖父の考えを尊重し、それらの事業を客観的に紹介しようと思います (3)~。
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六甲山頂明細図は、昭和33年祖父が作成し、六甲山ホテルが発行していた、山頂の案内図です。
地図は一冊のパンフレットをなしており、おそらくホテルの泊り客に配布(定価があるので販売?)したものと思われますが、表が地図、裏面が六甲山の案内文(写真付き)になっています。
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