共助:助けあおう

災害時には自分や家族だけでは乗り越えられない課題もたくさん発生します。例えば、日常は蛇口をひねれば出る水も出なくなり、バケツを持って給水車に水をもらいに行く必要があるかもしれません。水が入ったバケツはかなりの重量になります。これを数百メートルも運んだり、アパートの上の階に持って行ったりするのはかなりの重労働です。避難所に避難したら不特定多数の人目に常に触れています。インスリンを注射(注入)するにも、人目を避ける場所を見つけることすら大変になるかもしれません。

黙っていては誰も助けてくれません
困った時は隠さずに助けを求めましょう

そんな時、ひとりや家族でつらさを抱え込んでいてもストレスがたまり、血糖コントロールは難しくなる一方です。災害時はみんなで支え合いながら乗り越えるものです。自分の困ったことを隠さず、周りの人に助けを求めましょう。意外に思うほど簡単に解決してしまう問題もあるかもしれません。

しかし、病気特有の困りごとなど、病気の経験や知識のない人には伝わらない課題も出てくるでしょう。例えば、災害から時間が経ち救援物資が行き渡るようになると、避難所では食事が多めに配られることもあります。食べ過ぎは血糖管理に悪影響を及ぼすので配ってもらったお弁当の一部を残そうとすると、避難所の管理者に、「災害時は食べられるだけでもありがたいと思え。食べ残しを捨てる場所だって困るんだぞ。」といわれてしまうかもしれません。

平常時なら、ゆっくり時間をかければ理解できる人でも、いざ災害時には自分や家族のことに多くの時間を割かねばならず、あなたのことを理解する時間がもてないかもしれません。そのような状態なので、周りの人に過剰な期待をするのも禁物です。助けてもらえなくても、相手に非があるのではなく、災害時だから仕方がない、と考えましょう。しかし、それだけではあなたの課題は解決しませんね。

近くの同じ病気の仲間や患者会の仲間、
お医者さん、薬剤師さんに相談してみましょう

同じ病気を持っている仲間なら、あなたが何に困っていてどの程度深刻なのか、少し伝えるだけでわかってくれるでしょう。被災地外の遠方にいる人でも、患者会メンバーなど病気の知識や経験が豊富な人と連絡を取ることができたら、あなたの状況を即座に理解して、なんとか支援の手だてを考えてくれるでしょう。

阪神・淡路大震災では、大阪から手持ちのインスリンを届けてもらい災害を乗り切ることができたという方もいたそうです。また、外に連絡を取ることで災害の全体像がわかり気分が少し落ち着く、という効果もあります。

また、お医者さんや看護師さん、薬剤師さんなど医療従事者が近くにいれば、相談にのってもらえるかもしれません。避難所の中に、元看護師という方もいるかもしれません。あきらめずに探してみましょう。そんな時は、避難所の掲示板に張り紙をしてみるのが効果的です。避難所の管理者にお願いして、例えば「高齢の方や障害を持っている方、乳幼児、1型糖尿病(IDDM)などの病気の被災者がいます。介護や看護の経験がある方、いらっしゃいませんか?」等と張り出せば、名乗りを上げてくれる方がいるかもしれません。

それでも同じ病気の人にも連絡がとれず、医療従事者も近くにいなければどうしたらいいでしょうか?あきらめてはいけません。

日頃から名前を知っている人か、あなたが信頼できそうだと感じた人を頼りましょう

ひとりに相談してダメだったから、もうダメだ。そんなことは決してありません。病気のことを伝えるということについても、初めて顔を合わせる人より、日頃からの顔見知りの人の方が、真摯に話に耳を傾けてくれるでしょう。また、まわりを見渡して、誰が信頼できそうか、あなたの目できちんと見極めてみてください。多くのことに気がつき、さりげない配慮をしてくれている人はいませんか?あなたが信頼できそうだ、と思える人を見つけて頼ってみましょう。あなたを支えてくれる人はきっと近くにいるはずです。

日本IDDMネットワーク 「1型糖尿病[IDDM]お役立ちマニュアル」PART 3 −災害対応編− より